恵庭岳 (2012年5月28日)

ポロピナイコース

5月も末、札幌市街ではライラックの香りが至る所で感じられる季節になった。天気予報に反して好天となった週末、恵庭岳への登山を計画した。この時期、神居尻山には何度か登っていたが恵庭岳は初めてだ。

【登山開始】

朝5時に友人と合流し札幌を出発した。このとき空はまだどんよりと曇っていて時折弱い雨も降っており、僕は恵庭岳山腹からの雄大な風景を見られるのか心配であった。しかしながら登山口に到着したころには霧雨もやんでおり気温も上がってきた。登山口で入山者名簿に記帳すると、僕たちの30分前に入山した単独登山者がいるようだ。

6時半ちょうどに登山開始。歩きはじめて狭い山道を歩いた。至る所で木々が倒れている。学生時代に一度この山に登ったという友人は、「こんな道だったかなぁ?」と首をかしげていた。後でわかったがこの辺の木々は2004年の台風18号ですべて倒れてしまったのだった。確かにあの時の台風の猛威はすごかった。藻岩山でも未だに広範囲にわたって木々が倒れているし、北大のポプラ並木が壊滅的な被害を被ったのもそのせいだ。

登山道は概して崩れやすい岩が多く、歩きにくかった。時折写真のようにロープがありそれを頼りにぐいぐい登っていく。
恵庭岳往復の歩行距離は6.9kmだから、藻岩山の旭山記念コース(往復6.6km)とさほどかわりない。しかし標高差は藻岩の450メートルにくらべ恵庭岳は約1,000メートルと実に2倍以上もある。だからその分急峻で険しい山ということになるのだ。
写真はロープにつかまって支笏湖を振り返る友人の姿。

【花ばなに囲まれて】

キツい登り坂に小休止を取りながら登っていく。登山道の脇ではずっと、清楚なツバメオモトの花が心を癒してくれた。

さらに高度を上げていくと、さらにシラネアオイなど花の種類も増えていった。登山道の片隅でサンカヨウの群落が…。僕はサンカヨウのここまでの群落を見たことがなかった。

サンカヨウの花。

咲いている花の中にはエンレイソウもあった。その大部分は時期を過ぎてしまっていたようだが、登山道で僕の目を引き付けたのは、赤紫の花びらをつけた、ヒダカエンレイソウであった。本によるとヒダカエンレイソウは、エンレイソウとミヤマエンレイソウの自然交配で生まれた希少種だ。平地ではエンレイソウとミヤマエンレイソウは花期がずれているため自然交配する確率は低いが、山頂近くの涼しい場所で花期が重なっているとこのような雑種が生まれることがあるのだという。
この花を写真に収めることが、今回の登山の一つの目的でもあったから、見つけた時はとてもうれしかった。

花の写真を撮っているところを、友人に激写されてしまった(笑)。

【見晴台へ】

朝9時過ぎに第一見晴台に到着した。眼下に雄大な支笏湖が望まれた。しかしこのころ空には雲がかかっており写真撮影は断念し、第二見晴台を目指すことにした。看板には「この先さらに険しい山道です」という内容のことが書かれていた。

10時前には第二見晴台に到着した。ゆっくり登ったので大分時間がかかってしまった。空はまだかすんでいたが、頭上の青い空と雲が支笏湖の湖面に映って、まるで天空から下界を見下ろす鏡を見ているかのようだった。

朝食はきちんと摂ってきたものの、朝早く出発したこともあり第二見晴台に到着したときにはかなりお腹がすいていた。さっそく食事休憩だ。
精一杯のポーズを決めて後姿を撮ってみたがまったく絵になっていない(笑)。

恵庭岳は、岩盤崩落が見つかって、2001年8月に第二見晴台(標高約1,200メートル付近)から山頂までが立ち入り禁止となっているようだ。現在はさらに危険性が高まり、いつ数トンクラスの崩落が起きてもおかしくないのだという。
いやむしろこの第二見晴台ですら、崩落の危険性がゼロではない。今はここまで登ってこれることに感謝だ。

【オコタンペ湖、第一見晴台からの展望】

しばらく休んだ後、下山の準備を整えた。帰りは戻ってきた道を戻るだけだ。しかしこのような足場の悪い登山道では登りよりも下りの方が気を使う。急がずにゆっくり進んだ。
その時、木々の隙間からオコタンペ湖の姿が見えた。誰が言ったか知らないが、オコタンぺ湖は北海道三大秘湖の一つに数えられるのだそうだ。恵庭岳からはちょうど死角に位置しているため山頂からしか望むことができないと思っていたが、一か所だけ開けた部分があったのは嬉しかった。紺碧のオコタンぺ湖の背後にうっすらと雪をかぶった羊蹄山が見えた。

まもなくして第一見晴台にもどってきた。そこからの眺望はまさに絶景であった。新緑に映える支笏湖、そして登りのときには曇っていて見えなかった遠くの山々もくっきりと見渡せた。左前方には山頂にアンテナのある紋別岳、写真ではわかりづらいが右手奥には苫小牧市街の王子製紙の煙突が煙を吐いているのも見えた。

十分すぎるほど楽しい山行を堪能したあと、丸駒温泉で汗をながし帰路についたのであった。

(恵庭岳 2012年5月27日)
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