富良野岳~上ホロカメットク縦走 (2013年7月13-14日)

十勝岳温泉→富良野岳→三峰山→上富良野岳→上ホロカメットク山→十勝岳中腹→上ホロ避難小屋→十勝岳温泉

7月中旬、子供たちが帯広のキャンプ行事で不在になる機会に合わせて、十勝岳の縦走登山を計画した。幸いにして三連休は晴れの予報。金曜に仕事を終えた後、3時間かけて札幌から十勝岳温泉に到着、恒例の車中泊である(笑)。
車内でのビールのつまみは、富良野のマックで買ったハンバーガーセットのポテトのみ。メインのハンバーガーは明日の朝食だ。

【快晴の富良野岳へ】

朝5時半に起床した。頭上に広がる青空にやや興奮しながら、僕はハンバーガーをほおばった。

登山口を後にし、最初はやや平坦な道を歩いていく。
川を渡ってしばらく行くと、ところどころに雪渓が残っていた。

上ホロ分岐を、富良野岳方面に登る。

この辺りから、目指す富良野岳がその姿を現す。
青空に映える緑色の山肌が美しい。

前方に見える雪渓を望遠レンズで覗くと、9人ほどのパーティーが列をなして登っているのが見えた。

雪渓をトラバースする道にさしかかると、残雪の表面に残った風紋に登山者の足跡がつけられていた。
前方には富良野岳が常に見えていた。

ここで右方の来た道を見やると、凌雲閣の向こうに、雲に覆われた中富良野の街並みが見えた。雲の上面は真っ白。
まさに、"Every cloud has a silver lining."である。

登山道脇には高山植物も増えてきた。
この花はヨツバシオガマ。木々の間から差し込んだ光が、まるでスポットライトのようにその桃色の花弁を際立たせていた。

これは、カラマツソウであろうか。

【分岐から富良野岳往復】

富良野岳分岐に到着した。
まださらに急な傾斜を登らなければならない。しかしすでに十勝岳をはじめとする山々をくっきりと見る事ができた。

ここからしばらく木の階段を登ることになる。せっかくここまできて階段とは、いささか風情にかけると感じなくもないが、ほぼ直登の道なので落石を防ぐためには仕方がないのだろう。

再び稜線に出ると一気に花畑が広がる。チングルマとエゾノハクサンイチゲの群落。

エゾノハクサンイチゲをアップで撮ってみた。このように高山に咲く綺麗な花は白い花弁を持つものが多い。

これはエゾツツジ。ただシャッターを押しただけ。いわゆるバカ○ョン写真というやつかな(笑)。

こちらはイワカガミ。これもただシャッターを押しただけ。
まったく個人的だが、綺麗に見える花じゃないと本気になって撮る気がしない(笑)。

【富良野岳山頂からの絶景】

最後の急登を登りきった時、富良野岳山頂に立った。

富良野岳山頂からはまさに360度の眺望だった。北の方角には十勝岳の彼方に、残雪の大雪山を見渡すことができた。 これまでの汗が一気に吹き飛んで行った。

望遠レンズを取り付けて、大雪山方面を撮影してみた。

山頂で揺れていた、イワブクロ。
写真を撮り終えてザックの場所に戻ると、見慣れた顔を見かけた。なんと職場の同僚であった。彼女は最近山ガール化したのは聞いていたがまさかこの場所で出会うとは驚いた。
友人と一緒にこの山を訪れていたのである。
今回は日帰りで上ホロ方面まで縦走すると言っていた。しばらく話が弾んだあと、別れを告げ僕は先に進むことにした。

【上ホロへ】

再び富良野岳分岐に戻る。さっきより多くの人が休んでいるようだ。気温はどんどん上がってきて、これから稜線歩きの始まりだ。

稜線歩きといっても、平坦な道ばかりではない。上ホロまでは一旦コルまで下ったあと三峰山という山を通過する必要がある。三峰山とはその名のとおりで3つの峰からなる。両側に花を見ながらゆっくりと山歩きを楽しんだ。

上ホロへの稜線から後ろを振り返ると、さっきまで休んでいた富良野岳がずいぶん遠くにみえた。
流れる雲の下にそびえる秀峰の姿に感動を覚えずにいられなかった。

後ろから登山者が近づいてきたので、被写体として入れてみた。
本当は三脚を立てて自分撮りした写真もあるのだが、あえて割愛させていただく(笑)。

前方には十勝岳が近づいてきた。三峰山の奥に上ホロが見える。

三峰山の山頂。

三峰山の主峰(?)を過ぎると目の前にこれまでと違った風景が広がった。十勝岳と上富良野岳であろう。左側の斜面にはチングルマ、エゾコザクラの群落が広がっていた。

山の天気は変わりやすい。雲の流れは早く上富良野岳の山頂に立ったときは頭上に厚い雲がかかっていて、よい光線状態の写真を得ることはできなかったが、前方にこれから目指す上ホロと十勝岳の全貌が現れたときには安堵の息をついた。

ここから上ホロへ向かう道は圧巻である。切り立った火口を左に見ながら歩かねばならない。迫力は言うまでもない。しかし視界が乏しい天候の時には滑落の危険と背中合わせの道だ。

しばらくの登りの後、上ホロカメットク山山頂についた。上ホロはとても広い山頂だ。十勝岳の展望台とよく言われているように、まさしく人工的に作られた場所のような錯覚を覚えた。しかし標高1,920メートルの山は遮るものがなく風も強かった。

ここから急斜面を慎重に下ると、十勝岳の全容が見渡せる。そして今夜テントを張る予定の上ホロ避難小屋が見えてきた。

テン場につくと早々にテントを設営した。十勝岳を望むなんとも贅沢な場所だ。

蛇足だが、山でキャンプをするときは"エバンスノット"というロープワークを覚えておくと便利だ。
自然にほどけることが絶対になく、しかも自分でほどくのは簡単という魔法のような結び方だ。テントを張るときにはもちろん、余分にロープを持ちあるいておくと不測の事態にも対処できる。今回も持ち歩いていたロープがこの結び方で何度か役に立った。

テントを設営後、まずは雪を利用してビールを冷やした(笑)。
ついでに水場で水を調達しようと思ったが川が流れていない…。近くにいたオジサンに話を聞いてみたところ、今年の冬は寒かったため未だに水が流れておらず、雪を溶かして飲んでいるのだという。
僕はここに来るまでに1.5リットルの水分を摂取していた。ところで僕はいつも山行には3.5リットルの水を運ぶようにしている。0.5リットルは水筒。ザックの中にスポーツドリンク1リットル。さらに2リットルは真水だ。真水は粉で溶かせばスポーツドリンクになるし、怪我をしたときに洗浄する場合にも使える。多すぎると思う人もいるかもしれないが職業柄の性分と言えるかもしれない。
残り2リットルはあるので水は十分なのだが、消費した水を補給しようと雪を溶かしてみた。十勝岳に降った冷たい雪解け水はさぞかし美味いだろう…と思ったが実際にはまずくて飲めたものではなかった。
やはり流れている水でなければいけないと思った。もしくは簡易の浄水器も有用かもしれない。

テン場から眺める十勝岳。

【十勝岳に向かって】

テントを設営したり、ビールを冷やしたりいろいろやっていたらすでに14時頃になっていた。周りには徐々にテントを張る人たちも増えてきてすでにビールを飲んでいる人もいた。時間もあるので十勝岳まで行ってみようと考えたが、ここからは往復3時間もかかる。いかに夏の日が長い時期とは言っても多少無理があるなぁと思っていた。
だが荷物も軽くなったことだし、テントの中も整理し終えてから散歩がてら十勝岳方面への稜線を歩いてみることにした。
ゆっくりテン場を出ると、ここで先ほどあった同僚に出会った。なんたる偶然だろう。
彼女はしきりに僕のテントの場所を聞いてきた。なぜかと問えば、冷やしてあるビールをすべて台無しにしてしまおうという魂胆だった。まったくの拷問である(笑)。

彼女らに別れを告げて、十勝岳方面への稜線を歩く。
上ホロ避難小屋は切り立った崖のそばに立地している。このあたりまで来るとすでに砂礫だけの道となっており十勝岳へ向かうには常に滑落の危険が伴っている。

30分ほど歩いて、大砲岩という場所にでた。斜面に残雪を頂いた十勝岳の全容が美しく見えた。

眼下に見えるダムは白金ダムである。

前述のごとく、砂礫に覆われた登山道であるからこれから進む行程が手に取るように見えた。看板を見ると十勝岳まで1.5kmとある。まだ時間もあるから、もう少し進んでみようではないか。

不思議なことに、登山道はよく見渡せるはずなのに稜線を歩いている登山者は誰ひとりいなかった。大抵は日帰りの登山者であろうし上ホロの避難小屋に宿泊する人はもうすでに宿泊先でくつろいでいるのだから当然かもしれない。夕暮れも近づいてきて風も強くなってきた。往復の時間を考慮し16時まで十勝岳方面に向かって歩いてみることにした。


右側にはたおやかな山並みの向こうに石狩岳、ニペソツ山など東大雪の山々が見えた。僕がまだ登ったことのない山だ。

前方にほくろのように突き出た大岩が見えた。

大岩の場所まで辿りついたとき、時刻は16時。タイムアップだ。十勝岳がだいぶ近づいている。登山道がくっきり見えたが相変わらず歩いている人は誰ひとりいない。
今日はここで引き返してテン場に戻ることにした。明日も晴れの予報だから、同じルートを通って早朝の十勝岳を引き返し下山予定だ。

テン場に戻ると、切り立った上ホロとそれに抱かれるような避難小屋が見えてきた。

【上ホロの夕暮れ】

テン場に戻ったときには17時を過ぎていた。このまま晴れ間が続いたら上ホロの山頂で夕日を見る予定だ。
バーナーで火を起こして夕食の準備をした。カメラ機材が重いので食事はどうしてもフリーズドライの米とレトルトカレーなどというパターンになってしまうが、単独行だしあまり食事にこだわりもないのでちょうどいい。(とはいえ味は格別だったが(笑))
これからまたちょい登りがあるのでビールはお預けだ。

だいぶ日も西に傾いた頃、多くの登山者が夕日を見に外に出ていた。僕もまたしかり、山での夕暮れを堪能していると、ある気さくなオジサンが話しかけてくれた。彼の第一声は「最近、山ガール増えたよねぇ。テント担いでいる女性も多いもんねぇ。」だった(笑)。
彼は一昨年もこの場所に泊まったのだという。ちょうど花火の季節で中富良野(上富良野?)での花火大会を眼下に見下ろしたと言っていた。そしてニペソツ山の魅力についても語ってくれたのだった。
彼は明日、十勝岳を経由して吹上温泉に下山しそこからバスで十勝岳温泉まで戻るのだという。

時刻が18時を過ぎたとき、僕は荷物をまとめて上ホロの山頂を目指した。テン場から山頂まではおよそ15分だ。しかし斜面は急で足場もよくないため注意は必要である。
山頂までの途中で、西日を浴びる十勝岳と小さく見える避難小屋が壮大な一日の終わりを告げていた。

山頂には当然だれもいなかった。僕は真っ赤に焼ける富良野岳の山肌を期待したが、あいにくこのすぐあとから厚い雲がかかってきて期待した夕焼けは見ることができなかった。
しかしながら、一瞬だけ斜めに天使の梯子がかかった富良野岳の姿は美しかった。

【迎えた夜】

僕はそそくさとテン場に戻り、上ホロの雪で冷やしたビールを堪能した。
キンキンに冷えていたのは言うまでもない(笑)。
それを見ていた隣のテントのご夫婦に笑われてしまった(笑)。

山の夜はあっという間に訪れる。テントに入って服を着替えているとあっという間にまわりが暗くなってきた。
それと同時に、辺りの雲行きも怪しくなってきた様子だった。空には厚い雲がかかっていて、明日の天気が心配だ。携帯で確認しようと思ったがさすが安定のソ○トバンク。もちろん圏外であった(笑)。
テントの中でビールを堪能しつつ、地図を広げて写真のスライドショウ開始だ(笑)。

【翌朝はガスの中】

シュラフにくるまったとき、一応0時と3時に目覚ましをセットしていた。0時は星空を撮るため、3時はご来光を見るためだ。しかしながら一晩中外はガスに覆われており、時折強い風は吹き荒れて到底それどころではなかった。


朝を迎えた後も、テン場はガスの中で十勝岳はおろか上ホロの姿さえ見ることができなかった。

もし晴れていたら素晴らしい星空と朝日が見られたことだろう。僕はテントの中で朝食を摂りながらリベンジを誓った。
朝6時を過ぎてもガスは一向に晴れる気配がなく10メートル先も見えない状態だった。他の登山者たちは続々と各々の目的地へと出発して行った。 今日、十勝岳まで往復する予定だったが、風も強いこの状態でわざわざ往復することは本意ではないので、まっすぐ十勝岳温泉まで下山することにしたのだった。
(ま、十勝岳の山頂は一昨年も行ったからね。)
上ホロの山頂が近づくと少しだけガスが薄くなり、青空の一部が見えた。

【D尾根ルートを下って】

後方をみると、はるか彼方に雲海に浮かぶ東大雪の山が見えた。

霧に隠れる富良野岳。

下山途中でもさまざまな花が目を和ませてくれた。
これはキバナシャクナゲ。

エゾノツガザクラの群落と雪渓のコントラスト。

朝露にきらめくエゾコザクラ。

写真を撮っている様子。

一瞬、晴れ間が広がったとき、D尾根から富良野岳と三峰山が見えた。ここから見ると三峰山の名前の由来が良くわかった。

安政火口の方角を見下ろす。

背後はまだ曇っていたが、十勝岳と上ホロのシルエットが不気味に浮かび上がっていた。

十勝岳と切り立った山肌が恐ろしいまでの迫力を作り出していた。

ここから急な傾斜となり、階段が見えてくる。 しばらく歩くと登山口の十勝岳温泉だ。
また近いうちにこの場所にくることだろう。
下山してすぐ、富良野市を抜けて帯広にいる家族と合流した。子供たちもキャンプをすこぶる楽しんだ様子だった。帯広で味わったビールが格別だったのはいうまでもない(笑)。

家に帰ってテントを干した。

【おまけ】

帯広に一泊し、札幌に帰る途中で家族と富良野に立ち寄り、ラベンダー満開のファーム富田を訪れた。
遠方に十勝岳が望まれた。

一面の紫の絨毯。

甘い薫りが一面に立ち込めていた。

ラベンダー畑の向こうに、富良野美瑛ノロッコ号が到着。

十勝岳とノロッコ号。

(富良野岳〜上ホロカメットク縦走 2013年7月13-14日)
トップ