ヒダカソウ

絶滅の危機に瀕する固有種のヒダカソウが、アポイ岳山頂付近で岩陰にひっそりと咲いていた。
やや花期は過ぎていたが、とても嬉しかったのを覚えている。
後で知ったが2008年に観察されたヒダカソウはこの一株だけだったようだ。
この山から姿を消してしまう日は、そう遠くないのかもしれない。
絶滅危惧種IA類(CR)

(様似町 2008年5月4日)

2008年6月13日付、朝日新聞の全道版の記事にこのように記載されている。
高山植物の群落が国の特別天然記念物に指定されているアポイ岳(日高支庁様似町、標高810・6㍍)で、アポイ岳ファンクラブや町職員らが12日、盗掘を監視するために巡回した。今年で丸10 年を迎えた活動だが、最近では温暖化のためか高山植物が姿を消し、関係者は「盗まれる花もなくなった」と嘆く。  町教育委員会によると、アポイ岳は約1500万~2000万年前に日高山脈が生まれた時、地球の内部にあるマントルという岩石の層が隆起してできた。マントルはマグネシウムや鉄を多く含む「かんらん岩」が主成分で、この岩では特殊な植物が育つ。ヒダカソウやエゾコウゾリナなど、この一帯にしかない植物が多く見られるという。  貴重な花を狙って96年と97年にヒダカソウなどが根こそぎ奪われた。これを受けてファンクラブ会員らが98年から5月と6月に登山道を歩いて監視している。  盗掘はなくなったが、高山植物自体が減り、ササ類など繁殖力の強い植物が勢いを増した。約10年前まで「お花畑」として知られた標高500㍍付近では、ハイマツが身長を超すほどまでに伸び、お花畑の面影はない。  特に減ったのが「ヒダカソウ」。10年前には20輪あったが、今年は登山道で確認されたのはわずか1輪だという。背景に温暖化があると指摘する研究者もいる。町教委の田中正人学芸員(51)は「もはや盗まれるべき花もなくなってしまった」と話す。
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