緑岳~赤岳縦走 (2013年9月22-23日)

高原温泉→緑岳→高根ヶ原→白雲岳避難小屋→白雲岳→赤岳→銀泉台

9月下旬の三連休、仕事での発表を終えたあと東苗穂のマックで夕食を調達し層雲峡YHに向かった。連休初日ということもありかなり混雑していた。隅の椅子でビールを飲みながら未だに縦走ルートを決めあぐねていた僕に、泉谷しげる風の中年男性が話しかけてくれた。明日高原温泉から沼巡りをするので一緒にどうかという話であった。この時期はまだ高原温泉までのバスが出ていないため、僕は喜んで快諾し翌朝乗合タクシーで高原温泉まで向かうことにしたのだった。

翌朝、YHからジャンボタクシーに乗り45分ほどで高原温泉に到着した。結局十人弱があつまってひとり1,000円で高原温泉まで行くことができたのは有難いことであった。沼巡りコースへすすむ人が多い中、僕は緑岳を目指してザックを背負った。

【緑岳へ】

登山口にはいたるところから温泉の湯気が吹き出していた。

途中までは林間の急坂を登っていくが、かなりきつく感じた。昨日YHで遅くまでビールを飲んでたせいに違いない。しかも隣にはイビキの激しい外国人が寝ていたためかなりの寝不足だったのも災いした。休み休みしばらく歩いて展望の開ける場所に出ると、紅葉をまとった緑岳が目の前に現れた。ここまで来ると体が慣れてきたこともあり心身ともに元気になってきた(笑)。

【紅葉の大雪山】

歩きやすかったなだらかな木道を過ぎると、山頂までの長いガレ場の登りとなる。後ろを振り返るたびに秋色に染まった高根ケ原と忠別岳の雄姿が、疲れた汗を吹き飛ばしてくれた。

紅葉の部分を望遠レンズで撮影。

後ろからどんどん人が登ってきていた。多くは日帰り登山のようであった。後ろを歩いていた気さくなオジサンたちは、話題の人気ドラマ「半沢直樹」に出てくる大和田常務の話で盛り上がっていた。たしかにこの日は半沢の最終回だった。今日は山中泊で見れないから明日、家で録画したのを見ることにしよう。

緑岳山頂に立つと強い風が吹いていた。山頂で昼食をとる人たちも少し下ったガレ場に座っている人が多かった。

【高根ヶ原】

ここから白雲小屋まで降りてテントを設営し少し休憩をとった。風は強かったが天気も上々、僕はここから高根ヶ原まで往復することにした。 高根ヶ原からはかつては三笠新道を通って高原温泉まで降りることが可能であった。だが今は熊の出没のため事実上廃道になってしまっている。したがって現在では高根ヶ原の景色を見るためには白雲小屋かどこかに山中泊しなければ困難である。

GPSと地図を見ながら高根ヶ原分岐を過ぎると数名の人が立ち止まって集まっていた。

高根ヶ原から見下ろす。あいにく空には雲が出てきて光線状態は良好とは言えなかったが、眼下に見下ろす錦秋の湖沼群の美しさは圧巻であった。

真紅に染まった葉が山肌に彩を与えていた。

【白雲テン場の夜】

高根ヶ原の往復はのんびりあるいて約3時間。結構な距離だったテン場に戻って一息つくと南の方角には夕日に照らされた夕雲が美しかった。。

雲の流れは早く、次第に気温も下がってきていた。このときはまだトムラウシの姿は見えなかった。

日没間際の一瞬、トムラウシ山のシルエットが雲間から姿を現した。すでに辺りは暗くなってきていたから、僕は三脚を立てて長時間露光で雲を流してみた。まったくの偶然だけれど幻想的な雲に浮かぶトムラウシの姿を収めることができた。

白雲小屋からは、遠方に地平線のオレンジライン、小白雲岳に抱かれるようなテント群が並んでいた。 写真を撮っていると、バルブで星空を撮っていたオジサンが話しかけてきた。明日の朝、緑岳でご来光を見る予定だという。せっかくなら白雲岳はどうですか、と誘ってみたがオジサンは白雲岳まで登るのは大変だからと笑っていた。僕の考えではここから白雲岳は緑岳への1.5倍くらい大変だけど見える景色は5倍くらい違うと思っているから、もったいないなと思った。

日が沈むとあたりはみるみる濃紺の帳に包まれ、光の灯ったテントがまるでアイスキャンドルのようだった。 頭上には、残照の地平線から立ちのぼった天の川が、壮大な夜の訪れを告げていた。

【荘厳なる夜明け】

翌朝の日の出時刻は午前5時15分。僕は4時にテントをでて、白雲岳山頂を目指した。この夜は日齢17の月。
月明かりに照らされた夜空には冬の大三角がきらめいていた。ベテルギウスの超新星爆発が噂されて久しいがこの雄大な三角形を見ることのできるのは本当にあと数年なのだろうか。


白雲分岐までたどり着くと一気に展望が開けてくる。

空には一面のグラデーション、さえぎるものは何もない。 今年一番の寒さとなった秋分の日の朝、真東の方角から昇った太陽は荘厳な大雪の山々を照らしていた。

標高2,230メートルからのご来光。

まさにawe-inspiringという形容詞がふさわしい荘厳な光景。

【朝日に染まる】

空はゆっくりと茜色に染まっていった。 刻々と姿を変えてゆく大自然の片隅で、僕は自分のちっぽけさを感じずにはいられなかった。

ちなみに白雲岳からの同時刻の眺めをカシミール3Dで描画するとこのようになる。地平線の向こうに見える山は雄阿寒岳である。

山頂標識のシルエット。

背後にはオレンジ色に稜線を染める旭岳の姿があった。そしてその山肌には、自分がいまいる白雲岳の影が映っていた。

南の方角にはトムラウシがくっきりと鎮座していた。まるですぐにでも歩いていけそうな、そんな錯覚さえ覚えるのだった。

【山頂をあとに】

しばらく雄大な風景を堪能したのち、テン場に戻ることにした。登山道は高さ10センチメートルはあろうかという霜柱に覆われていて、歩くとザクザクと音がした。まるでムーミンにでてくるニョロニョロか、えのき茸みたいだ。

途中白雲岳を振り返る。長く伸びた影のおかげでもともと長い脚がさらに長く見えた。

テントをたたんで朝食をすませ、再びテン場をあとにする。

白雲分岐より赤岳方面に向かい、銀泉台に降りるルートである。紅葉シーズンということもあり数多くの登山者とすれ違った。

第一花園より銀泉台を見下ろす。

銀泉台からシャトルバスにのり大雪湖のレイクサイトで1時間ほど接続バスを待ち、層雲峡に戻った。レイクサイトのオジサンによると、3連休が晴れの日が続いたおかげで昨日は1,000人以上の人が銀泉台の紅葉を見に訪れたのだという。今度はゆっくり沼巡りも楽しいかもしれない。

(緑岳〜赤岳縦走 2013年9月22-23日)
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